提案: 稲葉 一浩
主担当: 稲葉 一浩
与えられた整数の列を for 文などを使って先頭から順に見て, それまでに加えた値の和が 300 を超えなければ加え,超えるようであれば何もせず次に進む, というプログラムを実装するとよい. 題意に沿って素直に実装すると入力データのサイズに比例する時間で計算が終わるので, 計算量に関する特別な工夫などは必要ない.
提案: 石畑 清
主担当: 石畑 清
1 分ごとに 2 人の選手が走った距離を与えられたとき,両者あわせて何回の追い抜きがあったかを求める問題である.
1 分ごとのタイミングで,どちらがリードしているかを判断するのは簡単である.問題はその前にどちらがリードしていたかの判断である.2 つの方法が考えられる.
提案: 山口 文彦
主担当: 山口 文彦
移動回数の最小値を求める問題ではあるが,問題の空間が均質なので,探索をする必要はない. y 軸が傾いた斜交座標系のような番号付けが与えられているが,これを見慣れた直交座標系で考えてみるとイメージしやすいだろうか.
x と y の符号が同じ場合 (第 1・3 象限) と異なる場合 (第 2・4 象限) で,様子が違うことが分かる.符号が同じ場合は,|x| 回の移動で指定したマスと x 座標を合わせ,|y| 回の移動で y 座標を合わせることができる.
符号が異なる場合,左上へ移動することで x が減り y が増える(右下に移動する場合は,この逆).左上または右下へ min(|x|, |y|) 回移動すれば,x 座標かまたは y 座標の一方を指定したマスと合わせることができる.残る y または x の差は max(|x|, |y|) − min(|x|, |y|) であるから,これらの合計が最小の移動回数となる.
まとめると,(0, 0) から (x, y) までのハチの巣距離は, x と y の符号が同じであれば |x| + |y| であり,異なれば max(|x|, |y|) となる.
提案: 楠本 充
主担当: 楠本 充
この問題では移動距離 d が非常に大きいので単に 1 ステップずつシミュレーションするのでは計算が間に合わない.高速化する必要がある.
まず,移動中に虫の x または y 座標が 0 未満か 101 以上になった場合には,そこから未来永劫,虫が障害物に出会うことは無い.この場合にはそのときの座標から,残りの移動距離分だけ向きに沿って虫を直線移動をさせれば答えが求まる.
そのようにならない場合を考える.虫の x, y 座標が 0 以上か 100 以下であるときの虫の状態は,向きが 4 方向あることを考慮して高々 101 × 101 × 4 通りである.虫の移動を初期状態から 1 ステップずつシミュレーションして過去と同じ状態になった場合,虫は今後もその状態からある一定の状態遷移をずっと繰り返すことになる.この繰り返しの移動距離の長さを c とすると,残りの移動距離を c で割った余りを取ることにより,シミュレーションの残りのステップを高々 c 以下にできる.c は 101 × 101 × 4 以下であり小さいため,再び 1 ステップずつシミュレーションしていけば答えが求まる.
以上の 2 つの考察を踏まえることで,(101 × 101 × 4 + n) に比例する程度の計算時間でこの問題を解くことができる.
余談であるが,だんごむしには交替性転向反応と呼ばれる移動メカニズムがあるようである.この移動メカニズムは本問題中の虫がやっていることよりも複雑である.
提案: 佐藤 遼太郎
主担当: 丸茂 直貴
c1 = cn の場合は,土地の外周に家を配置することで目標が達成できる.以下では c1 ≠ cn の場合を考える.
最も南の行に注目する.西から見たとき最も右の色が cn であるという条件と,東から見たとき最も左の色が c1 であるという条件から,目標達成のためには 1 ≤ i < j ≤ n を満たすある i, j に対し,an,i = cn かつ an,j = c1 である必要がある.これは下図のような状況である.
土地を南から見ることも考えると,前述の i, j に対し,ci = cn, cj = c1 が成り立つ必要がある.すなわち,3 条件 1 < i < j < n, ci = cn, cj = c1 を満たす i, j が存在しない場合の答えは No である.
このような i, j が存在する場合は,例えば以下の図のように家を配置し色を塗れば,目標を達成することができる.
提案: 住谷 達哉
主担当: 鵜川 始陽
ビリヤード台上の球を一つだけ直線状に撃ち出して,コインがある座標を狙う問題である.球は壁に当たると跳ね返る.止まっている球に当たったり台の隅の穴に落ちることなくコインに当たる球を探すことが求められている.
それぞれの球の動きをシミュレーションするか,コインに当たった球があると仮定してその球の動きをコイン側からシミュレーションする.球の数が多いので,これをどうまとめて球との衝突判定を軽くするかが鍵となる.球の軌道は直線 y = x + k1 と直線 y = − x + k2 の上の線分を組合わせたものになる.ここで − a < k1 < b, 0 < k2 < a + b である.全ての球をこのうちのどの直線上にあるかで分類することで,1 回跳ね返るたびに 1 回の検査で軌道上に止まっている球があるかどうかを判定できる.
なお,全ての球の動きをシミュレーションしても,軌道の線分が存在できる直線が 2(a + b - 1) 個しかないので現実的な時間で計算が終わる.
提案: 住谷 達哉
主担当: 住谷 達哉
赤いカード上の整数と青いカード上の整数は多重集合として一致することから,bi = api (i = 1, ... n) が成り立つような 1 から n の順列 p = (p1, p2, ..., pn) が存在する.各参加者に配られた 2 枚のカードに書かれた整数の和の条件 ai + api = si は順列 p のサイクルごとに独立した連立方程式になる.
長さ k のサイクルがある場合を考える.表記の簡単のため,1 → 2 → … → k → 1 のサイクルを仮定すると,
2a1 = s1 − s2 + … + sk と解ける.a1 が整数であることはこの式の右辺が偶数であること,すなわち s1, s2, ..., sk の総和が偶数であることと同値である.また,このとき a2 以降も全て整数になる.
奇数番目の式の総和と偶数番目の式の総和を比較することで,s1 + s3 + … + sk−1 = s2 + s4 + … + sk という条件が得られる.この条件が成り立つ場合のみ解が存在し,特に a1 を自由に選んだ解が存在することから,整数解も存在する.
本題の解説に戻る.s = (s1, s2, ..., sn) の総和が奇数のときは明らかに不可である.以下,そうでない場合を考える.
s の n 項を,それぞれの総和が偶数になるように奇数個の要素を持ついくつかのグループに分けることが可能である.そのグループごとのサイクルを持つような順列 p を選ぶことで整数解が得られる.
奇数個の要素の和が必ず奇数になるため,順列 p に奇数長のサイクルがあると整数解が存在しない.そのため偶数長のサイクルのみにする必要がある.上記議論より,整数解を持つには {1, 2, ..., n} の部分集合 T であって次の条件を満たすものが必要となることが分かる.
提案: 佐藤 遼太郎
主担当: 岩田 陽一
この解説中では座標は 0-indexed で表記し、行方向を x 軸、列方向を y 軸とする。 ピースの配置を、ピースに属する正方形の x 座標の最小値と y 座標の最小値の組によって表すことにする。 ピースの高さを h、幅を w とすると、初期位置は (0,0) であり、目標位置は (r-h,c-w) である。
あるマスを侵入禁止にすると、ピースの配置のうちの幾つかが禁止される。 いくつかのマスを侵入禁止にしたことで禁止されたピース配置が、初期位置の (0,0) と目標位置の (r-h,c-w) を分断すると、Bob の目標が達成される。 盤面の平面性からこの条件は、左下側(x=r-h or y=0)から右上側(x=0 or y=c-w)へ禁止された配置を8方向に辿るパスが存在する、と言い換えることができる。
あるマスを侵入禁止にしたとき、禁止されるピース配置は、ピースを180度回転させて[0,r-h]×[0,c-w]の長方形との共通部分をとったものとなる。 ピースの形状に関する制約から、この図形は常に連結である。 従って、先の言い換えにおける禁止された配置を辿るパスは、この禁止された連結な図形を順に辿っていくもののみを考えれば十分である。 よって、最短路問題に帰着してこの問題を解くことができる。
ピースの大きさを n とすると、頂点数 O(rc)、辺数 O(rcn) のグラフの最短路問題に帰着されるため、全体の計算量は O(rcn log rc) となる。 最短路問題への帰着方法によっては辺数が O(rcn^2)となるものもあるが、制約的にはこちらでも実行時間制限には間に合うと想定される。
提案: 城下 慎也
主担当: 城下 慎也
この問題は最適な攻撃対象を選択することで,味方チームの誰の風船も割られない確率を最小化する問題である.
どの味方よりも先に攻撃する敵およびどの敵よりも後に攻撃する味方は攻撃対象の選択に影響を与えないため取り除いておく.すると,行動順は「味方の行動が連続する区間(味方区間)」と「敵の行動が連続する区間(敵区間)」が交互に現れる.
末端の敵区間から後ろ向きに確率を計算することを考える.
以下,(※)を示す.(※)は以下の 2 種類の命題に分解することができ,それぞれを敵区間数の帰納法によって示す.
◯ 敵区間数が 1 個の場合
もし,味方のうち誰が成功し誰が失敗するかが事前にわかっている場合は,敵の命中率の高い順(同じ命中率なら左優先とする)に選ぶことが最適である.攻撃対象の決定前に味方の命中可否がわかっていない場合も,命中率の高い敵から貪欲に狙うことで同じ成功率を達成できる.これは,貪欲に狙った場合は実際に誰が成功したかによらず最終的に命中率の高い順に行動不能になっていることから示せる.すなわち,命中率の高い順にグローバルな攻撃順を定義することで命題 1 が成立する.命題 2 についても,敵の命中率を高い順に \(p_1, p_2, ...\) としたとき,\(d_i = 1 - p_i\) とすることで成立する.
◯ 敵区間数が \(k\) 個以下でグローバルな攻撃順が定義できるとしたときの,敵区間数が \(k+1\) 個の場合
まず,命題 1 を示す.まず,全体は「\(k+1\) 番目の味方区間」「\(k+1\) 番目の敵区間」「\(k\) 番目以下の区間」に分解できる.
「\(k+1\) 番目の敵区間」と「\(k\) 番目以下の区間」は帰納法の仮定よりそれぞれにグローバルな攻撃順を定義できる.両者を結合した全体でグローバルな攻撃順を定義できるか考える.
「\(k+1\) 番目の味方区間」での命中成否が事前に分かっているとする.「\(k+1\) 番目の敵区間」に \(a\) 回,「\(k\) 番目以下の区間」に \(b\) 回攻撃を命中させるとき,それぞれの区間でそれぞれのグローバルな攻撃順に従って攻撃することが最適となる.全体でグローバルな攻撃順が定義できるためには,\(a + b + 1\) 人倒せるときの最適解が,\(a + b\) 人倒せるときの最適解に 1 人加えることで実現できることを示せばよい.
帰納法の仮定より、「\(k+1\) 番目の敵区間」「\(k\) 番目以下の区間」それぞれについて前述の \(R\) を定義したとき,それぞれの実数列 \(d_{l,1} \le d_{l,2} \le ... \le d_{l,m}\) および \(d_{r,1} \le d_{r,2} \le ... \le d_{r,m}\) が定義できる.すると、a+b+1 人倒せるときの最適解は、\({d_{l,1}, d_{l,2}, ... d_{l,m}, d_{r,1}, d_{r,2}, ... d_{r,n}}\) 全体の集合のうち,小さい方から \(a+b+1\) 番目までを選べばよい.選び方より,この集合の中に \(a+b\) 人倒せるときの最適解が含まれている.
味方の命中可否がわからない場合も先程と同様の議論で貪欲法の最適性が示せる.
最後に命題 2 を証明する.\({d_{l,1}, d_{l,2}, ... d_{l,m}, d_{r,1}, d_{r,2}, ... d_{r,n}}\) 全体を昇順に並べ替えた順列を \((d'_1, d'_2, ...)\) とする. 「\(k+1\) 番目の味方区間」が 0 人のときは,最大勝率 \(R(x)\) は \(R(x) = Π_{x \lt y} d'_y \) となり条件を満たす. 「\(k+1\) 番目の味方区間」が \(r (\ge 0)\) 人で成立している状態から、命中率 \(p\) の味方が「\(k+1\) 番目の味方区間」の末端に増えたときを考える.
新しい味方が増える前の最大勝率 \(R(x)\) が計算されており,条件を満たしているとする.新しい味方が増えたときの最大勝率 \(R'(x)\) は,
$$ R'(x) = p * R(x - 1) + (1 - p) * R(x) $$となる.このとき,
$$ \begin{eqnarray} R'(x + 1) * R'(x - 1) - R'(x)^2 & = & (p * R(x) + (1 - p) * R(x + 1)) * (p * R(x - 2) + (1 - p) * R(x - 1))\\ & & - (p * R(x - 1) + (1 - p) * R(x)) * (p * R(x - 1) + (1 - p) * R(x))\\ & = & p^2 (R(x)R(x-2) - R(x-1)^2) + (1-p)p(R(x-2)R(x+1) - R(x-1)R(x)) \\ & & + (1-p)^2(R(x+1)R(x-1) - R(x)^2)\\ & \le & 0 \end{eqnarray} $$(\(R(x)\) の定義より \(x \le y\) なら \(R(x-1)/R(x) \le R(y)/R(y+1) \Leftrightarrow R(x)R(y) \ge R(x-1)R(y+1)\))
が言えるため,\(d_x = R'(x - 1) / R'(x) \le R'(x) / R'(x + 1) = d_{x+1}\) が成り立つ.これを再帰的に定義することで任意の長さの「\(k+1\) 番目の味方区間」についても命題 2 が成り立つ.
全体で \(O(n^2)\) で解くことができる.実装方針によっては,命中率 1 の敵の扱いに注意する必要がある.