世界大会への道

このページでは、日本の大学に所属するチームが、ACM-ICPCの世界大会に出場するチームを決定するルールについて説明します。(2016.10.9時点の情報に基づきます。)

ルールの構造について

  • ACM-ICPC 世界大会(World Final)への進出枠決定ルールは、北米、中南米、アジア、アフリカ、ヨーロッパなどの大陸(Super-region)ごとに決まっています。「一大学から世界大会に出られるのは一チームのみ」ということは世界共通で決まっています。
    日本は、アジア(Asia Super-region)に所属するので、日本の大学はアジアのルールに従います。
  • アジアのルールは、Asia Director (アジア全体の委員長)である C J. Hwang先生が責任者となって決定し、Asia Blogに掲載されます。(2017年の世界大会進出枠を決める2016年ルールは、2016.10.3に掲載され、2016.10.6に一部修正されました。)
  • アジア全体は、さらに3つの sub-region から構成されています。PP (Pacific and Indochina Peninsula), EC (East Continent), WC (West Continent)の3つです。日本はPPに所属しています。アジアのルールの一部は、PP, EC, WC ごとに異なる部分があり、それぞれの方式で世界大会進出チームを決定します。PPなどのsub-regionごとに異なるルール部分も、Hwang先生のAsia Blogに掲載されます。2016年のPPローカルルールは 2016.10.6に掲載され、2016.10.10頃に一部加筆されました。)
  • なお、2016年から、アジア地区全体のDirectorを補佐する3人の Associate Directorがという役職が新たにもうけられ、その一人として、筧先生が就任されました。PP, EC, WCの各地区から一人です。

世界大会への進出枠決定方法に関する私的な解説

ルールとしては上記の Asia Blog掲載のものだけですが、これだけでは何がどうなっているかよくわかりません。そこで、2016年世界大会におけるDirectorたちの会議に出席した者の個人の責任で、以下の若干の解説を試みます。

  • Medal University (前回世界大会で金メダル、銀メダル、銅メダルのいずれかを獲得したチームが所属する大学)は、よほどのこと(Regional contestで10位以内のチームが1つもないなど)がない限り、世界大会への出場枠を獲得します。
  • アジア全体のルールとして、「1つのチームは2つまでのアジアのRegional Contestに参加できる」というものがあります。これにより、日本の大学のチームは、つくば大会以外に、もう1つ PP地区で実施されるRegional Contestに参加して、世界大会出場の可能性を上げることができます。
  • PP地区では、2016年から(2017年世界大会出場チーム決定から)新しいPPルールを採用することになりました。このルールでは、PPで実施するすべてのRegional Contest (アジアつくば大会を含む)での成績を「PP全体での成績」に換算するために、以下の計算をします。
    • そのRegional Contestの「規模」をあらわす Site Scoreという値 (その Regional Contestの参加大学数などから計算される値に比例)をSとする
    • そのRegional Contestにおける各チームの「順位」をRとする
    • 「PP全体での成績」に換算するため、(R-1)/S を計算して、その値が小さい方を「上位」とする。
    • 上位から順に、世界大会出場大学を決める。ただし、Medal University はもともと出場枠を持っているので除外するし、同一大学のチームが複数回上位に出てきたら、2つ目以降は除外する。

    複雑そうな式ですが、意図は単純で、「各Regional contestで上位のチームは、PP全体でも上位になる」「規模が大きなRegional Contestの成績の方が、規模が小さなRegoinal Contestの成績より上位になる」という考え方を反映したものです。なお、「R/S」ではなく「(R-1)/S」としているのは、「各Regional Contesetで1位のチームはすべて、「PP全体で同率1位」とする」ためのものです。つまり、Regional Contestで優勝した大学は、必ず世界大会へ進出する枠を獲得できることになります。(ただし、「Regional Contestで優勝したチームが必ず世界大会へ進出する」わけではありません。同一大学の複数チームが、異なるRegional Contestで優勝した場合でも、1大学1チームの原則に従い、世界大会に行けるのは1チームだけです。)なお、ルール上は、上記で最終決定ではなく、例外的な措置などの調整がはいることもあるようです。(これで割り当てた結果、どこか1か国がPP地区の大半の出場枠を獲得してしまった場合など。)

  • 結局のところ、日本の大学のチームが世界大会に行くためには、世界大会でMedal University になるか、つくば大会もしくは他のPP地区内のRegional Contestに参加して優勝またはそれに準じる成績をおさめる必要があることになります。「準じる成績」、つまり、2位以下の場合は、Site Scoreが大きなRegional Contest が有利になります。各大会のSite Scoreの正確な値は公表されていませんが、過去の各Regional Contestにおける参加大学数等から推測することはある程度可能です。また、PP地区全体でいくつのチームが世界大会に行けるかの数も毎回変動するようです。2016年5月の世界大会では、Medal University や主催国枠などを除いて「9」でした。
  • これまで書いてきたのは、「どの大学が世界大会進出枠を獲得するか」でした。1つの大学で、複数のチームが進出枠獲得に貢献した場合(たとえば、2つのチームが異なるRegional Contestでそれぞれ優勝した場合)は、世界大会には1大学1チームしか進出できないので、どれか1つに絞る必要があります。また、Medal Universityのどのチームが進出するかという問題もあります。これらのケースでの決定方法についてのルールは存在していないようですので、各大学で決める、あるいは、Regional Contestでの成績上位のチームに自動的に決まるなど、各国、地域で決めているようです。(ただし、最終的にどう決めたかは、Hwang先生がチェックするので、説得力のある決め方をしなければいけません。)

[Disclaimer] 上記の「私的な解説」の部分は、世界大会にはじめて参加した者(Director 亀山)が得た情報に基づく記述であり、アジアつくば大会実行委員会として、誤りがないことを保証するものではありません。さらに、今後ルール自体が変更される可能性もありますので、今後の情勢(特にAsia Blogの記述)を注意深く見守ることをお勧めします。